恋心。








「そんなに拗ねるな倉持」
後ろからかけられた声を、顎を上げて無視する。
いかにも「無視しています」というその態度がどれだけガキっぽく見えるか、それに対してこのひとがどんな風に思うかなんて、そんなことはよく解っていた。
ひそやかな苦笑が耳に届く。予想通りの反応だ。
それが悔しくて余計に意固地になって、更に顎を上げた。

ぽん。
頭の上に大きなてのひらが置かれる。
あ、と思った瞬間にぐうっと押さえ込むように力を入れられ、下がった頭をそのままぐりぐりと力強く撫で回されて。
あまりに乱暴な手の動きに我慢ができなくなって、「いてえっすよ!」と文句を言いながら顔を上げたら、優しくわらう視線とぶつかった。
「やっとこっちを見たな」
嬉しそうにそう言う口調が憎らしくて、ぶうっと口を尖らせる。
「……やり方が乱暴っすよ」
「お前ほどじゃないさ」
沢村ちゃん涙目だったぞ?
その一言が耳に入った瞬間、ほんの少し戻りかけていた機嫌が瞬く間に急降下し、眉間にぐうっと皺が寄るのを感じた。




沢村、沢村、沢村って。
いつだって増子さんは沢村の味方ばっかりだ。
さっきだってあのバカがあんまりうるせえから蹴り飛ばしてやっただけなのに。
そこで反省すればいいものを食ってかかりやがるから、俺も負けじと応戦してたら最終的に増子さんに止められて。 根性ナシのバカが涙目になっているのを見咎められて、俺が叱られた。
「先輩なんだから少しは譲れ」だって。
『3年は2年より1年のことが可愛い』ってマジなんだなといつだって思う。
こんな理不尽な贔屓があるなら、先輩なんてクソ食らえだ。



「増子さんは沢村のこと甘やかしすぎるんスよ」
ぽろりと言葉が漏れた。
その瞬間、しまった!と口を噤む。声に出すつもりなんてなかったのに。
意図せず零れてしまった声は小さくて頼りなくて若干掠れてさえいて。いつもの俺のものとはかけ離れた、要するに無茶苦茶格好悪いものだった。
何言ってんだ俺!
瞠目しながら顔を上げると、視線の先には少し驚いた顔をしてこちらを見つめる顔があって。
まずいやばいこの空気をどうにかしなければ!と、使命感にも似た思いでヒャハハと笑い声をあげてみた。

「沢村ばっかりズルいっすよ、俺だって増子さんに可愛がられてえのに〜!」
ずるいずるい、増子さんは俺のことなんて可愛くねえんだ!
そんな軽口を叩いて、こどものように笑いながらダダをこねてみる。
増子さんはきょとんと目を見張った後、酷くおかしそうに笑いだした。部屋に響く豪快な笑い声。
「バカだなあ倉持は」
ひとしきり笑った後、増子さんはそう言って再び俺の頭へと手を伸ばす。
先程よりは柔らかい、それでも力を込められたてのひらにがしがしと撫でられ、俺の髪は鳥の巣みたいにぐちゃぐちゃになった。
日頃から念入りに仕上げているトレードマークのヘアスタイル。
それをこんな風にぐちゃぐちゃにできる人なんて、それを俺が許している人なんて他にいないって、この人はちゃんと気づいているんだろうか。
ぼんやりとそんなことを考えている俺に、太陽みたいな笑顔が降りそそぐ。
「可愛いに決まってるだろう?」
お前も沢村ちゃんも、可愛い後輩がいて俺は本当に幸せだよ。
そう言うと、増子さんは笑い声を上げながら俺の耳をぎゅうっと引っ張った。
俺は痛い痛いと悲鳴をあげながら、今しがた聞いた言葉を胸の奥で噛み締めていた。




本当は。
沢村と同じくらいじゃ嫌で。
沢村だけじゃなくて、他のやつらと一緒でも嫌で。
自分だけを見て欲しいと、そう思っていたりするんだけど。
もうずっと長いこと持ち続けているこの想いは、いまだ当人には告げられずにいる。
弱気とか守りの姿勢とか、本当はガラじゃねえんだけど。


「可愛い後輩」と言ってわらってくれるその顔をもう少し見ていたいから。
しばらくはこのポジションを楽しむのもいいか、と思った。
それが言い訳だっていうことは、自分が一番よく解っていた。






20090826


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トウコさんからおっ誕生日プレゼントをいただいてしまいましたんばっ・・・!!!!!
ししししししかもの増←倉・・・!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!(落ち着け)
もえころされるかとおもった。
可愛い可愛い可愛い!切ない!可愛い!(キモイですね)(だがしかし!自重しない)
も〜本当片想い好きぃ〜〜〜〜・・・切ないっ(キm)
一年生が可愛い増子さん可愛い。沢村にやきもち焼いちゃう倉持可愛い。
5号室普通に可愛い。
トレードマークのくだりでナンノは死にましたよ。理想の増←倉がここにある。
はぁあ〜〜〜〜・・・
もう本当に幸せいっっっっっぱいでした!!!!トウコさんありがとう〜〜〜vvvv





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